辛いもの好きは要注意!「おしり」と「辛い物」の意外な関係性、専門医が解説
川崎駅前大腸と胃の消化器内視鏡・肛門外科クリニック(通称:カワナイ)です。
今回は、「世界一わかりやすい肛門の教科書 ⑨辛いもの好きは要注意!「おしり」と「辛い物」の意外な関係性、専門医が解説」についてお話ししたいと思います。
「ラーメンはやっぱり激辛で!」 「北極で!!」
「麻婆豆腐は山椒たっぷりじゃないと!」
辛いものがお好きで、日々の食事に欠かせないという方も多いのではないでしょうか。
しかし、その「辛さ」が、実は私たちのおしりの健康に少なからず影響を与えていることをご存知でしょうか?
辛い物を食べた翌日、おなかの調子が悪かったり、おしりに違和感を感じたこと、誰しもがあると思います。
今回は「辛い物はおしりに悪いのか?」という疑問にお答えし、その理由と、辛い物との賢い付き合い方について詳しく解説していきます。
結論:辛い物は「おしりに良くない」!
まず結論から申し上げると、辛い物の過剰な摂取は、おしりの健康、特に肛門の症状を悪化させるリスクがあります!!!
特に、現在おしりの症状でお悩みの方や、元々デリケートな体質の方は注意が必要です。
なぜ辛い物はおしりに悪いのか?そのメカニズムを解説
辛い物の代表的な成分である「カプサイシン」(唐辛子などに含まれる成分)は、私たちの体内で以下のような影響を及ぼします。
1.消化されずに肛門を直接刺激する
これが、辛い物がおしりに悪い最大の理由です。
カプサイシンの多くは、体内で吸収されにくい性質を持っています。そのため、消化管を通過してもほとんど分解されず、便に混ざったまま、排便時に直接肛門の粘膜を刺激してしまうのです。
想像してみてください。口に入れた時に「辛い!」と感じる成分が、そのまま便として排出される際に、肛門のデリケートな粘膜に触れるのです。これは、まるで傷口に塩を塗るようなもの。
- 痔(いぼ痔・切れ痔)の悪化: 既に痔がある場合、カプサイシンの刺激は、炎症や痛みをさらに強める原因となります。また、切れ痔がある場合、排便時にしみたり、激しい痛みに繋がります。
- 肛門周囲の炎症: 痔がない方でも、刺激によって肛門周囲の皮膚が赤くなったり、ヒリヒリとした炎症を起こすことがあります。カプサイシンを含んだ便を排便した際は、ウォッシュレットなどでしっかりと洗浄し、清潔に保ちましょう。
2.下痢を引き起こし、肛門に負担をかけるから
カプサイシンには、腸の動きを活発にする作用(交感神経刺激作用)があります。適度な量であれば便通を促すこともありますが、過剰に摂取すると、腸が水分を十分に吸収する前に便を送り出してしまい、下痢を引き起こすことがあります。
- 頻繁な排便による摩擦: 下痢便は水様性のため、排便回数が増え、肛門を拭く回数も増えます。これにより、肛門の粘膜や皮膚が摩擦を受け、傷つきやすくなります。
- 下痢便自体の刺激: 下痢便は、通常の便よりも刺激性が高く、肛門を荒らしやすい性質があります。カプサイシンとの相乗効果でより肛門にふたんがかかります。
- 痔瘻(あな痔)のリスク: 下痢は、肛門周囲に炎症を引き起こし、痔瘻(肛門の感染症)のリスクを高める要因の一つとしても知られています。
3.特発性肛門搔痒症を悪化させる可能性
以前のブログでも解説した「特発性肛門搔痒症」は、原因がはっきりしない慢性的なおしりの痒みですが、生活習慣や食生活が症状に影響を与えることが多くあります。
辛い物は、肛門周囲のデリケートな皮膚を直接刺激し、炎症や乾燥を引き起こす可能性があります。これにより、元々痒みを感じやすい特発性肛門搔痒症の症状を、さらに悪化させてしまうことが考えられます。
辛いものを「ゼロ」にしなくても大丈夫!賢い付き合い方
辛い物が大好きだからといって、完全に断つ必要はありません。ポイントは「量と食べ方の工夫」です。
- 体調が悪い時や、おしりの調子が悪い時は避ける: 痔がある、下痢気味、肛門が痒いなど、おしりの不調を感じている時は、辛い物の摂取を控えましょう。
- 胃腸を保護する食材と一緒に: 牛乳やヨーグルトなどの乳製品、油分のあるもの(ただし油の摂りすぎも注意)は、胃腸の粘膜を保護し、刺激を和らげる効果が期待できます。辛い物と一緒に摂ることで、負担を軽減できる可能性があります。
- 適度な水分補給: 下痢になった場合は、脱水を防ぐためにも水分をしっかり補給しましょう。下痢の後に便秘になると、より肛門に負担がかかってしまいます。
- 普段からバランスの取れた食生活を: 食物繊維を多く含む野菜や果物、発酵食品などを積極的に摂り、便通を整えることが、おしりの健康には最も重要です。
最後に
辛い物はおいしさや食欲増進効果など、魅力的な側面も持ち合わせています。しかし、おしりの健康を考えると、その刺激成分が負担となることがあるのも事実です。
「辛い物を食べると、いつもおしりが痛くなる」「痒みがひどくなる」と感じる方は、無理せず摂取量を減らすか、一時的に控えることをお勧めします。
もし、辛い物を控えても症状が改善しない、あるいは気になる症状が続くようでしたら、一人で悩まず、川崎駅前大腸と胃の消化器内視鏡・肛門外科クリニックにご相談ください。専門医が丁寧な診察とアドバイスで、あなたの悩みに寄り添います。
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【最後にワンポイントアドバイス】
どうしても辛いものを食べたい場合には、
・生よりも火を通す
・ヨーグルトや油と一緒に摂る
・大量摂取ではなく適量にとどめる
等の工夫をしましょう。(辛み成分であるカプサイシンは火を通したり油で調理したりすると、体内に吸収されやすくなるそうです)