痔と生活習慣 LIFESTYLE
痔と生活習慣の関係
痔は、日々の生活習慣が大きく関係する病気です。特に、便秘や下痢、長時間の座位や立位での仕事などが発症や悪化の要因になります。
便秘では、硬い便を出そうと強くいきむことで肛門の血管に強い圧力がかかり、うっ血や腫れが生じやすくなります。一方で下痢が続くと、肛門周囲の皮膚や粘膜が刺激を受け、炎症や痛みが起こりやすくなります。
また、長時間座ったまま・立ったままの姿勢を続けると、下半身の血流が滞り、肛門周囲の血管にも負担がかかります。
予防のためには、便通を整える生活習慣が大切です。
食物繊維を多く含む食事や十分な水分摂取、軽い運動による血行促進、そして排便を我慢しないことが基本です。いきみすぎず自然な排便を心がけ、規則正しい生活を送ることで、痔の発症や再発を防ぐことができます。
痔と似た症状を示す病気
痔のような痛みや出血があっても、実際には別の病気が原因のこともあります。以下のような疾患が、痔と似た症状を引き起こすことがあります。
肛門周囲皮膚炎
肛門のまわりの皮膚が炎症を起こす病気で、かゆみ・赤み・ヒリヒリ感などが現れます。刺激の強い石けんや過度な清拭、アレルギーなどが原因になることもあります。
肛門周囲膿瘍
肛門の周辺に細菌感染が起こり、膿がたまる病気です。強い痛みや腫れ、発熱を伴う場合もあり、自然に治ることは少なく、外科的処置が必要になることがあります。
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肛門裂肛
肛門周囲の皮膚や粘膜が裂けてしまう状態で、排便時の鋭い痛みや少量の出血がみられます。一般的に「切れ痔」と呼ばれる病気です。
直腸内の疾患
内痔核や直腸ポリープ、直腸がんなど、直腸内にできる病変が痔に似た症状を引き起こすこともあります。血便や残便感、持続する痛みなどがある場合は注意が必要です。
痔と似た症状でも、原因となる病気によって治療法は大きく異なります。
自己判断で市販薬を使用する前に、まずは専門の医師による診察を受けることをおすすめします。早期に適切な治療を行うことで、症状の改善と再発予防につながります。
痔の予防と生活習慣の見直し
食生活を整える
痔の予防には、毎日の食事が大きく関係します。食物繊維を多く含む野菜・果物・穀物・豆類をバランスよく取り入れることで、便のかさが増し、排便がスムーズになります。
また、乳酸菌・オレイン酸・オリゴ糖などは、腸内の善玉菌を増やして腸内環境を整える働きがあります。ヨーグルトや納豆、オリーブオイルなどを積極的に取り入れることもおすすめです。
水分をしっかり補給する
水分が不足すると、便が硬くなり排便時に強い負担がかかります。
こまめな水分補給を意識し、1日あたり1.5〜2リットル程度を目安に水分をとりましょう。カフェインの多い飲み物ではなく、水や麦茶などを中心にするとよいでしょう。
適度な運動を取り入れる
軽い運動は腸の動きを活発にし、便通の改善に役立ちます。
ウォーキングやストレッチ、ヨガ、水泳などの有酸素運動を無理のない範囲で継続することが大切です。デスクワーク中心の方も、日常の中で体を動かす時間を意識的に確保しましょう。
長時間同じ姿勢を避ける
長時間座ったまま、または立ちっぱなしの姿勢を続けると、肛門まわりの血流が悪くなります。
仕事中でも30〜60分ごとに軽く体を動かすことで、血行を促進し痔の予防につながります。立ち上がって伸びをするだけでも効果的です。
排便時のいきみを控える
便意を感じたらできるだけ我慢せず、自然なタイミングで排便することが大切です。
トイレでは強くいきまず、短時間(3分以内)で済ませるよう心がけましょう。いきみすぎや長時間の排便姿勢は、肛門に強い圧力をかけ、痔の悪化を招くことがあります。
ウォシュレットの正しい使い方
排便後はウォシュレットを使用すると、肛門を清潔に保つことができます。
ただし、長時間の洗浄や強い水圧は避けるようにしましょう。洗いすぎは皮膚の常在菌を失わせ、かえって炎症を起こす原因になります。洗浄後は柔らかいトイレットペーパーで軽く押さえるか、乾燥機能を利用して水分を優しく拭き取ってください。